考えがまとまらないとき、なぜ紙に書くと少し扱いやすくなるのか

朝の木の机に、開いた白いノート、ペン、陶器のマグカップ、無地のカード3枚が置かれている様子 朝活ジャーナリング

考えがまとまらないとき、「とりあえず紙に書いてみよう」と言われることがあります。

たとえば、明日の仕事で忘れたくないことがいくつもある。副業で考えたい案が重なっている。日常の小さな用事が頭から離れない。そんなとき、頭の中だけで全部を扱おうとすると、何から考えればよいのか分からなくなることがあります。

紙が答えを知っているわけではありません。書いただけで悩みが消えたり、正しい判断ができたりするとも限りません。

それでも、頭の中にあることを紙へ出せば、あとから見直せる形にはできます。この記事では、記憶に関する研究を手がかりに、紙へ書くことで何が変わる可能性があるのかを考えます。

ここで紹介する研究は、日常の悩みや自由に書くジャーナリングを直接調べたものではありません。また、紙がスマートフォンやパソコンより優れていることを示すものでもありません。研究で分かっている範囲を、日常で考えるための手がかりとして使います。

頭の中では「考える」と「覚えておく」が同時に起きる

たとえば、明日の仕事について考えているとします。

  • 朝一番に連絡する相手
  • 会議までに確認する資料
  • 忘れたくない小さな用事

頭の中だけで考えているときは、内容を検討するだけでなく、それぞれの項目を忘れないように保つことも同時に行っています。

短期記憶を調べた実験では、覚える項目が多いほど、情報を紙へ書き留める方法が選ばれやすいことが報告されています。実際にどれくらい覚えられるかだけでなく、「自分はどれくらい覚えられそうか」という見積もりも、書き留めるかどうかと関係していました。

このように、覚えたり考えたりする仕事の一部を、メモや道具へ預けることを「認知的オフローディング」と呼びます。難しい言葉ですが、予定をカレンダーへ登録したり、買い物リストを書いたりすることも、その身近な例です。

紙は、考えを置いて見直す作業台になる

紙へ書くことは、頭の容量を増やすことではありません。記憶力そのものが上がるという話でもありません。

明日の仕事が気になっているなら、「朝一番の連絡」「会議資料」「確認事項」と紙に書いておく。そうすれば、自分が何を気にしていたのかを、あとから見直せます。

紙は、答えを出す機械というより、いったん考えを置いて眺めるための小さな作業台です。

頭の中だけで同じ項目を何度も思い出そうとする代わりに、書いたものへ戻って確認できます。そのうえで、次はどの項目を見るのか、何と何を比べるのかを考えられます。

書くと、混ざっていたものを分けて見やすくなることがある

頭の中では、起きたこと、感じたこと、これからすることが、一つの塊のように感じられることがあります。

「仕事が大変だ」と思っていても、その中には複数のものが混ざっているかもしれません。

  • 締切が二つ重なっている
  • 間に合うか不安で焦っている
  • どちらを先に確認するか決めていない

紙へ出すと、項目を横に並べたり、線で分けたり、順番を入れ替えたりできます。

ただし、紙の上に情報があるだけで、自動的に考えやすくなるわけではありません。書いた内容がばらばらだったり、何と何を比べるのか分からなかったりすれば、見直しにくいこともあります。

外に出せば必ず深く考えられる、とは限らない

研究では、情報を書き留めても、はっきりした成績の向上が見られない場合がありました。

また、数字を比べる実験では、目の前に見えている並びと、頭の中で覚えている並びがうまくかみ合わないと、かえって判断が難しくなる場合がありました。

これらは、短期記憶や数字の比較を調べた結果です。日常のジャーナリングでも同じことが起きる、とそのまま言うことはできません。

ただ、「外へ出すこと」と「使いやすい形にすること」は同じではない、という注意点にはなります。

書いた後に目指したいのは、すぐに正解を出すことではありません。まずは、次にどこを見ればよいかが分かる状態です。

ここまでが研究から慎重に言える範囲です。

ここからは、この考え方を日常で使うための一つの分け方を提案します。研究で効果が確認された標準手法ではなく、混ざったものを見分けやすくするための記事上の応用です。

白い猫が机の上で、無地のカード3枚を分けて見ている様子

実践:事実/今、感じていること/次に決めることの3列に分ける

考えが一つの塊になっているときは、紙を三つに分けてみます。

事実 今、感じていること 次に決めること
起きたこと、確認できること 今、感じていること 次に判断すること

以下は、仕事・副業・日常を想定した架空の例です。

事実 今、感じていること 次に決めること
仕事の締切が二つ重なっている 間に合うか不安で、焦っている どちらを先に確認するか
副業の記事案が三つある どれから進めるか迷っている 今日どの案に取り組むか
日用品の買い足しが必要になっている 買い忘れそうで気になっている 今日買うか、別日にするか

手順は六つです。

  1. 紙を「事実」「今、感じていること」「次に決めること」の3列に分ける
  2. 左に、起きたことや確認できることを書く
  3. 中央に、今、感じていることを書く
  4. 右に、次に判断することを書く
  5. 答えが出ない欄は空白のままにする
  6. 最後に「今すぐ解決する必要があるか」だけを確認する

大切なのは、すべての欄を埋めることではありません。

気持ちは分かるけれど、次に何を決めるかはまだ分からない。事実だと思っていたことが、実は自分の予想だった。そうした違いに気づくだけでも、頭の中で一つになっていたものを、別々に見やすくなることがあります。

この3列は、認知的オフローディング研究で効果が証明された方法ではありません。研究の考え方を、日常で試しやすい形にした一つの提案です。

答えを出す前に、見える形にする

紙へ書くことが、問題を自動的に解決してくれるわけではありません。

それでも、頭の中だけで保っていた情報を外へ置けば、あとから見直したり、並べたり、分けたりできるようになります。外へ出した後は、何を書いたかだけでなく、どう分け、どう見直すかも大切です。

考えがまとまらないとき、最初から答えを出そうとしなくても大丈夫です。

まずは、今、頭の中に置いたままにしていることを三つだけ書いてみてください。答えはまだ出さなくて大丈夫です。

次の記事では、書いた言葉から、なぜ自分の感情や本音が見えやすくなることがあるのかを考えます。

私自身が朝にどのようにノートを書いているかは、こちらの記事にまとめています。

朝はノートだけを書く|60歳会社員の30分の朝活

参考文献


紙へ出したあとの小さな書き方は、朝5分ジャーナリングで、今日の1アクションを決める方法 もあわせてどうぞ。

この記事のnote版は、考えがまとまらないとき、なぜ紙に書くと少し扱いやすくなるのか です。

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